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街全体で乳がん体験者の方と一緒に楽しめるイベントを
~“ほっとマンマ・イン嬉野”~

嬉野温泉旅館組合おかみの会代表
大村屋女将 北川節子さん

北川節子さん

― 北川さん、はじめまして。以前、北川さんが、「ピンクリボンのお宿ネットワーク」のシンポジウムで講演されていたのを聴いたことはあるのですが、お話しするのは初めてです。実は嬉野に来るのも初めてです。

北川さん(以下北川):はじめまして。そして、ようこそ嬉野へ。嬉野はお茶でも有名ですが、温泉は日本三大美肌の湯として知られているんですよ。

嬉野温泉での15年の積み重ね〜線を引かずに一緒に楽しむ〜

― 北川さん、嬉野ではずいぶん以前から街全体で乳がん患者さんをサポートしようという活動があるようですね。

北川:はい。1998年に当時の嬉野町が「健康保養地」の指定を受けたのですが、ちょうどピンクリボン活動が盛り上がり始めたタイミングだったこともあり、嬉野町と女将の会が共同で活動していこうという話になりました。

― 具体的にはどんなことをされているのですか?

北川:「ほっとマンマ・イン嬉野」という名の下に、年に1回旅館の大浴場を貸切にして、お医者さんの講演を聴いたりフラダンス教室を行なったりと、毎回テーマを変えてイベントをやっています。大浴場のある宿は限られているので、会場はそうした旅館の持ち回りでやっています。

― 活動を始めてみて気づかれたことは何かありましたか?

北川:ともかく最初は反響の大きさにびっくりしました。正直、がんについての知識は当時はほとんどなくて、別世界の話にしか思えていなかったのですが、こんなにも多くの患者さんがいらっしゃったのかと、自分の無知にショックを受けました。

― 患者さんであることを隠されていた方も結構多かったということですか?

北川:ええ、今でこそ乳がんになってもオープンに話す方が増えてきましたが、当時はまだ表に出せない雰囲気でしたね。逆にだからこそ、いらっしゃるお客さまも真剣で、この活動をやっていることの重みをひしひしと感じました。

― 患者さんとどう接していったら良いのか、悩まれたりはしませんでしたか?

北川:それは悩みましたよ。最初は、「笑っちゃいけない」「祭り事のようになってはいけない」「講演の会場に入って邪魔をしてはいけない」と固くなっていましたね。だから、最初はご来館時のご挨拶とお見送りだけしていました。

― 遠慮のかたまりだったんですね(笑)

北川:そうなんです。でも、会に出られた患者さんにアンケートをしてみると、「女将さんたちともっとお話ししたかった」「お風呂に一緒に入りたかった」「食事も一緒にしたかった」という声をたくさん頂いて。
それで、今は歌を唄ったりフラダンスも踊ったりと、一緒に楽しませて頂くスタイルに変わってきています。

― それはいいですね。

北川:行政の方も毎回いらっしゃっているのですが、以前はご挨拶だけされてあとはお任せという感じだったのが、最近はフラダンス一緒に踊ったりするようになってきました。
患者さんは、線を引かれて「自分たちは患者だ」という意識をさせられるのはいやなんですよ。取り組みを続けているうちに、皆そこに気づいてきたという感じですね。

患者になる前に患者の気持ちを知っていた

― 大村屋さんとして、患者さんがお客さまとして来られた時に普段気を配られていることはありますか?

北川:何と言っても、貸切風呂です。着替えられる時もお風呂の中も、貸切の空間があると他人の目を全く気にせずにゆっくり入って頂けますから。

― 他には何かありますか?

北川:あとはやはりお食事でしょうか。抗がん剤で治療されている場合、食べられるものが人それぞれ違ってきますので。「お食事でできることが何かあったら遠慮なくおっしゃってくださいね」とお声がけしています。

― 味覚が変わって、困られている患者さんも多いですからね。どんなお食事だと良いとか悪いとかあるのですか?

北川:これだけ患者さんと接してくると、薬の量や種類、そして患者さんのその時々の状態によって、味覚への影響は本当に様々なことがわかります。逆に、パターン化できることはありませんね。これこれの薬にはこれこれの食事が良い、なんて本などで見かけると「嘘でしょ」と思ってしまうくらい(笑)ともかくお一人お一人のご要望にお応えするようにしています。

― そのお客さんが患者さんだってことはどうやってわかるのですか?

北川:ご予約の際に「ホームページを見たのですが、実は。。。」という形で教えて頂くこともありますし、そうでなくても来られた際に、「女将さんですか?」と聞かれたらあとはアイコンタクトでわかります。

大村屋

体験者の方、お一人お一人に合わせたおもてなしを提供されています

― 北川さんご自身も6年ほど前に経験者になられたと伺っています。それによって、見方や接し方が変わったというようなことはありますか?

北川:よくそう言われるのですが、それまでに大勢の患者さんとご一緒させて頂く時間があったからか、不思議と変わらないんです。自分自身も、治療したら何が起きるかとかどう感じるかということについて、予行演習済みという感じで違和感無かったですね。

― それくらい患者さんの心に寄り添ってずっと活動を続けてこられたということですね。今後の取り組みで力を入れていかれたいことはありますか?

北川:やはり早期発見は大事だと思いますので、今健康と思っている女性にも検診はしっかり受けてほしいなと願っています。今後はそうした面での活動もしていきたいですね。

― 本日は、満室のお客さまを迎える準備でお忙しい中に、お時間割いて頂きましてありがとうございました。温泉に入りたくても入れないという悩みを抱えていらっしゃる患者さんは全国に大勢いらっしゃいます。そうした患者さんたちが、大村屋さんのようなお宿で少しでも「ホッとする」時を過ごしていかれたら素敵ですね。

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