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お母さんが乳がんになった時、子どもたちに心のケアを

社会医療法人博愛会相良病院(鹿児島県鹿児島市)での取り組み

親の重い病気は、子どもの心や生活に深く影響を与え、時にはそのことがストレスになって心の病につながることもあることがわかっています。
母親が乳がんになった時、子どもたちは、お母さんの髪の毛が抜けていく姿を見たり、お父さんが疲れて自分と遊んでくれなくなったりする中で、「私が何かしちゃったからこうなったのかな?」といった不安を抱えているかもしれません。
今回は、そうした、がん治療中の親御さんをもつお子さんへの心のケアプログラムを実施されている社会医療法人 博愛会 相良病院の取り組みをご紹介します。

親ががんになった子どものサポートプログラム「CLIMB®(クライム)」

Children’s Lives Include Moments of Bravery = 子どもはいざというとき、勇気を示します
CLIMB®プログラムとは、アメリカで広く用いられている、がんの親を持つ子どものためのグループワークで、その目的は、子どもの持っている力を引き出し、親の病気に関連するストレスに対処していくための能力を高めることです。
日本では、がんになった親とその子どもをサポートする団体「Hope Tree」が、全国の医療機関でのCLIMB®プログラム開催を支援しています。

CLIMB®プログラムで学ぶこと

1. 子どもが、親のがんにまつわる自分の感情を理解し(自分がどのような気持ちでいるのか、この感じはどのような感情なのか)、自分自身に対して、また、自分を世話してくれる人に対して表現するための能力を学びます。

2. 周囲の人たちに感情を伝える方法を学びます。

3. 感情に対処することを学びます。

対象

親御さんが、がんであるということを伝えられているお子さん(小学生)

プログラム

全6回

  テーマ 気持ち 活動
1回 自分自身やがんにまつわる話を共有し、孤立感を弱める 幸せ・楽しい 自分について
2回 がんという病気とその治療について知識を得る 混乱 がんって何?
3回 悲しみの感情を表現し緩和する 悲しみ 気持ちのお面つくり
4回 子どもの持っている強さを引き出し不安を緩和する 怖い・不安 強さの箱作り
5回 怒りの感情を適切に表現し対処する方法を考える 怒り 怒りバイバイ
さいころ
6回 家族とのコミュニケーションを手助けする 気持ちを伝える お見舞いカード

〈毎回共通の内容〉

● ウォーミングアップ(らくがきタイム)

● 今日扱う「気持ち」(楽しい・混乱…)

● 活動(工作など)

● 今日のまとめ

参加者の声

お子さんから

CLIMB®にきてみんなとはなせるのがうれしかったです。これからおかあさんのおてつだいをしたり、こえをかけてみたりしようとおもいました。
お母さんの病気のことを知ったとき、お母さんががんになったのは自分のせいだと思ったり、お母さんがいなくなってしまうんじゃないかと心配になりました。でも、CLIMB®でお母さんのちりょうや病気のことを勉強したり、みんなと話して元気になりました。いまは安心してすごしています。

お母さん方から

以前はなるべく病気のことを考えたくなかったので、CLIMB®に参加することにもあまり気乗りがしませんでした。でも、ここに来て活動に参加してみたら、子どもたちに同じ状況の友達ができたのと同時に、私も辛いことや泣きごとを話せる仲間ができました。子どもの気持ちをケアしてもらいながら、家族同士の交流により、私たちも救われています。
私が乳がんになってから、子どもが「がん」という言葉に敏感に反応するようになりました。がん患者を扱ったドラマは、みんな最後に亡くなっていくものばかり。子ども自身も本当につらく不安な気持ちを抱えていたのではないかと思います。CLIMB®に参加後、成長した子どもたちから、今は自分が元気をもらっている毎日です。

CLIMB®プログラム同窓会のようす

相良病院では数ヵ月に一度、CLIMB®プログラムの同窓会が開かれ、親御さんやお子さんがプログラム終了後にも参加者同士で自分の気持ちを話せる場所を作り、同期以外のメンバーとも交流できる機会を作っています。同窓会は、医師、看護師だけでなく多くの病院スタッフの方との関わりによって、参加者同士の交流がより深まるプログラムになっています。
久しぶりに会った子どもたちは、お互いの成長を確認し合ったり、お母さん方は治療についての情報交換や、落ち着いた今だから話せる気持ちを打ち明け合うなど、どちらにとってもかけがえのない時間となっているようでした。


親御さんと子供たち、それぞれに分かれてプログラムに取り組みます。
この日お母さんたちはご自身の体験や気持ちをまとめ、病院内に掲示するメッセージボードを作りました。

お子さんたちは、これからCLIMB®に参加するお友達へのメッセージカードを作成。

その後は、お楽しみのケーキ作り。(栄養課の方が前日に焼いたケーキを思い思いにデコレーション!)

みんなでクリスマスパーティ。久しぶりに集まったメンバーで話がはずみます。デコレーションは子ども達一人一人の個性あふれる力作揃い、お母さんたちも感動!

(2015年12月取材)

~プログラムを開催している相良病院 江口惠子先生にお話を伺いました~

自分の人生をどう生きていくかを大切にしてほしい

社会医療法人博愛会 相良病院
副院長・総看護部長
江口 惠子先生

当法人では、乳がん患者さんへの一連のケアの中で、そのご家族、お子さんへのサポートを体系的に行っています。
乳がん患者さんの60%近くが子育て世代であり、お母さんが乳がんになった時、お子さんはお子さんなりに不安や心配を抱え、混乱しています。そういった状況で、発達段階や反応に応じて、お子さんの気持ちを置き去りにしないようにするためにできることを、患者さんとともに考え、サポートしています。

その一環として、2013年より、CLIMB®を実施しています。プログラムでは、専門のトレーニングを受けた医療スタッフがファシリテーター(案内役)を務めています。子どもたちは、お母さんが乳がんなのは自分だけではないことを知り安心します。そして、お母さんの受けている治療は怖いものではないことを理解したり、自分の感情を表現し、整理するワークショップを行います。すると、お子さんはあらかじめ心の準備ができるようになったり、お母さんの病気は自分のせいではないことを知り、同じ状況にある他の子も同じ気持ちなんだということを知ることができるようになります。親子の対話も促進されると共に、治療を受けるお母さんに対して子どもさんからのいたわりの言葉やお手伝いをするようになるなどの日常生活での変化も見られてきています。

また、このプログラムを実施している時間は、同時に親である患者さん同士も別室で交流を行います。乳がんを抱えながら子供を育てる親同士、共感し合える人がいるということは、大きな心の支えの一つになっているようです。プログラム終了後には、年に数回、同窓会を開催しており、お子さんや患者さん同士の絆が段々と深まっていくのを感じています。さらに、子どもたちには、同じような境遇のお子さんに励ましのメッセージカードを送るなどの成長もみられ、このメッセージカードをもらったお子さんがプログラムに参加するなど新たな発展もみられています。

乳がんになった時、ご自身やご家族は、不安や混乱などの気持ちを抱かれるかもしれません。私自身、子どもを育てながら病気を患った経験もあり、人生は本当に思いがけないことの連続だということを実感しています。そういった状況で、ご自身の人生をどう生きていくか、ということを大切にしてほしいと思います。
そのために、私たちはいつでも手助けをします。ぜひ、一人で抱え込まないで相談できる人を見つけたり、このようなサポート活動を選択肢の一つとして活用していただきたいですね。

がんになった親御さんとそのお子さんのサポート団体

Hope Tree(ホープツリー)

がんと診断された時、子どもに伝えても大丈夫なのか、どうやって伝えたらいいのか、この先どうやって子どもを支えていくことができるのか、など悩むことがあると思います。
Hope Treeは、がんの親をもつ子どもがより健康的に、親ががんという状況に対処していく能力を高めるため、支援する医療者等の育成を行い、併せて親と子どもへの支援を行うことで、がんの患者さんと家族が、より不安が少なく過ごせることを目指している団体です。
子どもたちは、どんなことを感じ、何を知りたいと思っているのか、発達段階に応じて、病気や死をどのように捉えているのか、どのような大人の関わりで安心して育っていくことが出来るのか。Hope Treeは、大人達が彼らのためにできることが自然に見つけられるように、子どもたちのことを知るための情報を提供しています。
周りの大人が子どもを支援する視点を持ち、親子のコミュニケーションがスムーズにとれることで、親と子のストレスも軽減され、家族として互いに協力しあって暮らしていけるようになる効果も期待できます。

~Hope Tree代表、大沢かおり先生にお話を伺いました~

子どもたちは、私たちが思っている以上に力を持った存在です

Hope Tree代表
東京共済病院 医療ソーシャルワーカー、精神保健福祉士、社会福祉士
大沢 かおり先生

がんであるということが分かった時、これから続く治療生活に不安になるのと同時に、お子さんがいる方は、これから子どもをちゃんと育てていけるかしらと不安に思うこともあるのではないでしょうか。親ががんになった時、子どもの生活も一変します。Hope Treeは、そんな状況にある親御さんと子どもたちを支援する団体です。

私自身も過去に乳がんを患った経験があり、その患者会の活動として出向いたアメリカのM.D.アンダーソンがんセンターで、“がんの親を持つ子どもへのケア”に出会いました。長年、医療ソーシャルワーカーとしての経験の中で、重い病気の患者さんのお子さんたちへの支援の必要性を感じていたため、推進役であるマーサ・アッシェンブレナー氏の協力を得て、2008年にHope Treeを立ち上げ、2010年からは、学童期の子どもをサポートするCLIMB®をスタートしました。

CLIMB®のグループワークでは、子どもへの効果として三つの「C」が期待できます。孤立感を軽減するための共通点(親ががん)(Commonality)、気持ちの表出(Catharsis)、子ども同士のつながり(Connection)です。また、回を重ねるごとに患者である親御さん、その配偶者同士の絆も生まれ、支え合える仲間となっていくのを感じます。

お子さんの元気・笑顔は、患者さんの生きがいにもつながります。子どもの存在が、頑張ろうという気持ちを引き出してくれることがあるのではないでしょうか。私たちは、そういった患者さん、お子さんへのケアを大事に考えています。

医療現場でも、親ががんになった時の子どもの支援の大切さに対する認識が高まってきています。病気以外のことは病院では相談できないと思わずに、お子さんのことで心配事があった時には、看護師や医師、ソーシャルワーカーなどの病院のスタッフに話してみてください。状況に応じて具体的な対応を一緒に考えてくれると思います。

Hope Treeのホームページでは、子どもの年齢に応じた親の病気の伝え方、子どもからの質問への答え方など、困った時に役立つ情報を提供しています。子どもにがんのことを伝えるのは勇気がいることと思います。でも何か隠されているな、と不安を感じている子どもは、「やっと話してくれた」とかえってホッとしたり、びっくりして泣いたりしても、親が自分を信頼して話してくれたことで親子の絆も深まります。

がんの患者さんと子どもたちに関わり、子どもの言葉を聞いたり、行動を見ていると、彼らは私たちが思っている以上に、力を持った存在であることを感じることが多いです。

ホームページ

Hope Tree(ホープツリー)~パパやママががんになったら~
URL: http://www.hope-tree.jp/

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